個別事例だが、久々の超大型取引で示唆に富む案件なので、今日は取り上げる。
三井不から日本ビルファンド投資法人(NBF)が、築50年近い西新宿を代表するビル、新宿三井ビル、と東京駅八重洲南口のグランドトウキョウサウスタワーを取得し増資(9日発表)。
従来なら三井不がリートにはまず売らないような物件だ。
併せて、同時に久しぶりの超大型増資も発表。
NBFは1400億円を調達、14.5%もの投資口の希薄化が起こる。
ただ私は、買わされ感に満ちた増資だとみる。
コロナ前の時代なら、リートにとって立派な取引と評価し得るが、
コロナで不動産市況が本格悪化を始めた途端、このようなディールが
成立するところが残念だ。
スポンサー三井不が新宿三井ビルについて、
「コロナで時代が変わった、築古だし売るなら今のうち」
と思っていることは間違いない。
コロナで都心オフィスの価値が大きく棄損することを
警戒しているからに他ならない。
そうでなければこのような象徴的な物件を手放すとは思えない。
新宿は非常にオフィス需給がタイトだったのだから、コロナ前は。
東京駅隣の超一流ビルとセットなので、ディール成立、といったところか。
業界最大手、三井不の考え、市況感が良く分かる、久しぶりの超重要なディールだ。
やはり三井不の市況感、いや三井不のオフィス賃貸業に対する認識そのものが、
根底から変化していることを示す内容だ。
このディールは、コロナ後のオフィスに対する認識の大転換を示しており、非常に示唆に富む。リートのスポンサーに対する弱い立場も再認識させられた。
都心オフィスのトップレントは、今後大きく下落しよう。
三井不はそう思っている、それが窺えるディールだ。