欧米とも大銀行の健全性は近年極めて良好だった。
当局が毎年のようにストレステストを実施してきた。
その中でここ数年、2行だけリスクが高いと懸念されていた銀行があった。
クレディスイスとドイツ銀行だ。
クレジットリスクの連鎖は、先日の予告通りスッキリとは終わらない。
今回興味深いのが、最後に出るはずの銀行リスク、が真っ先に
表面化している点。
普通は、資金の借り手の投資ファンドや低格付け企業などがまず問題になり、次にそこに貸し込んだ銀行が問題になる、というパターンだ。
数年前の例でいえば、アルケゴスキャピタルというプライベートファンドがまず破たんし、
そこに資金を付けたクレディスイスと野村が数千億円もの損失を計上した、という順だ。この損失は期末を越えて4月に表面化した。
SVBは、増資が失敗し株価が急落したため、主要顧客の早耳の新興企業たちが一斉に預金引き出しに殺到した。
SVBの資産の多くは債券で運用されており、満期まで持てばパリティで償還し損失は出ないはずだったがこの取り付けに対応する現金を確保するため、評価損(図)を実現させ売却し巨額の損を出さざるを得なくなり、買収してもらう先を探したが相手も見つからず一瞬で破綻、となった。
今回破綻後に買収する地銀が現れたが、資産は大幅にディスカウントされていて買い手に有利だ。
買収する側も、SVBには悪いがまず破綻させればその後安く資産を買い叩くチャンスが生まれるので、このように瀕死の金融機関は中小であれば助けないことが多い。
ここまでの銀行危機の経緯は、
顧客が似ていて分散できておらず、またALM(資産と負債の期間マッチング)の不備があったSVBと、元々問題があり過ぎたクレディスイス、があぶり出されただけの段階、と言える。
まだ本格的なクレジット危機は始まっていない。
借り手の問題が出ないうちに、危機の火種が収まることはない、とみている。
そして次に、そこに貸した銀行はどこ、という話が来るはずなのだ。
この年度末に企業やファンド等でも、まだ何か出るか、出ないか。
分からないがただ、大きな問題を抱えている所は必ずあるはず。
もし今回セーフだとしても、また半年後、あるいは1年後の期末には、必ず問題になる。