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『“オルカン” のリスク』 記事連載10月号より

「FP E-RPESS」(by FP研究所) 連載第77回

 

『“オルカン”のリスク』

 

 (執筆者:「株メンター」梶井 広行)

※以下、私の連載記事の転載です。

 

 

 

こんにちは、お元気ですか? 株メンターです。

日本株・Jリートの運用責任者(ファンドマネージャー)を務めてきた経験を踏まえ、広く投資に関する話題を毎月お伝えしています。

 

皆さんは新NISAで何を買いましたか。まだ検討中ですか。年始から大変な人気を集めたのが、海外株の投信です。その代表例が、多くの国の株価指数に分散投資する投信、略称オルカン、と呼ばれるインデックス投信です。

 

【ど素人が成功、こそ危険】

オルカンは、年始の新NISA解禁以来、たまたま円安の進行と海外株高で基準価格が大きく上昇しました。

皆が買うから自分も買って、上がったから結果オーライ、という感じだったでしょうか。しかしこれはただのビギナーズラック。ど素人がいきなり成功してしまうのはむしろ、危険です。“なんだ、簡単じゃん”と大きく張ったらその後は、・・。

 

 

海外株投信には4つのリスクがあると思います。

 

【1 高い手数料率】

オルカンは海外指数のインデックス投信で、手数料は安いのですが、一般に海外投信は手数料率が高めです。為替管理他が煩雑だからです。でもだから、金融機関が薦めてくるのです。儲かるからです。

購入金額の2~3%、などという手数料水準は高過ぎです。

 

【2 為替相場】

先日8月の急な円高でオルカンの基準価格も急落、驚いた人も多いと思います。皆さんは為替相場を見通せますか。円安がいつまでも続くと判断してオルカンを買ったのですか。

為替を見通すのは簡単ではないですが、よく分からなくてどうして海外投信を買えるのでしょうか。いや“分散投資のつもりで”とか、“日本より海外の方がまし”とか、・・。それだけで買ったのですか。

ドル円は、日本の事情だけでは決まりません。むしろ米の意向だけで(日本の事情など無視して)決まることも多い。金利差、貿易収支等の経済・金融の状況だけでなく、米政権の意向などにも精通する必要があります。

 

【3 新興国株のリスク】

海外の主要な新興国の株式市場は、大半の国で今、史上最高値圏、スッ高値圏です。ご存知でしたか。そんなに各国とも経済は堅調、でしょうか?

ではなぜ、株価はどの国も高いのでしょう。

 

多くの新興国は今、インフレに悩まされています。経常収支が構造的に赤字な新興国は世界に多く(人口が多く輸入依存で重要な輸出産業に乏しい国々:インド・ブラジル・インドネシア・メキシコ・トルコ等々)、通貨は売られやすい。通貨の弱い国は、輸入インフレで物価を圧迫され、高インフレになりがちです。

インフレとは、モノの値段が上がることを意味しますが、通貨の価値が下がってもインフレになります。

通貨の弱い多くの新興国では、価値の下がった通貨で名目値の株価をみるので、株価はインフレートされ、実力を伴わず上昇してしまいます。

典型例がトルコです。リラは暴落、そして今、超インフレの最中ですが株価は急騰、昨年市場指数は約3倍に上昇し今も高値圏です。このような国の株高は、通貨暴落の裏返し、とも言えるのです。

こうした株価の水準はサステナブルとは言えないと私はみています。

 

【4 カントリーリスク】

海外資産への投資の際には、このカントリーリスクも考慮すべきだと思います。

安心安全、平和の国の日本人は、カントリーリスクに対する認識が極めて乏しいです。

昔の話ですが、大手スーパーが中国に進出した際に、当初売上好調でしたが、反日感情の高まりから店舗に投石を受け営業がストップしたことなどがありました。また、先日は日本の製薬会社社員が海外で当局に突如拘束されましたね。

予想外・想定外のリスクが多く起こる現実に、日本の投資家は十分配慮していないと思います。海外投資は想定よりはるかにリスクが高いと考えるべきです。

 

そもそも我が国で海外投資が人気化する背景には、日本人の日本の将来に対する過度な悲観、が背景にあるのではないでしょうか。

「日本に将来性がないから、分散して海外にも投資!」という、ある意味安易な考えです。でも、海外には、時に日本のそれを遥かに上回る大きなリスクが存在し得るのです。

我々日本人が、日本しか見ていないことにその大きな原因があります。

 

日本の方が、はるかにまし、だったりするのですよ。だから、海外からこれだけ多くの観光客が来るのです。

 

 

【まとめ】

世界がインフレモードに大転換した今、経常赤字の定着している米英や主要新興国には、高物価・高金利に苦しむ時代が到来したとみています。そんな時代、それら国々の株価は高値を更新し続けることは可能でしょうか。

 

海外株への分散投資を始めるのは、相場が大きく下落するのを待ってから、で良いのでは。5年後、10年後?・・

少なくとも、今のスッ高値を買いに行く必要はないと私は思います。

 

 

ではまた次回。

以上、株メンターⓇでした。来月もお楽しみに。

 

(月1連載) 

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コメント: 1
  • #1

    石場 民子 (日曜日, 13 10月 2024 07:02)

    お久しぶりです。先生の講義、とても、勉強に、なりました。また、FPの研修で、先生の講義、聞きたいです。よろしくお願いします。