第82回「大円高?今後の為替相場」
皆さんこんにちは、株メンター梶井です。
投資教育者として、皆さんの資産形成にストレートに役立つコラムを、元運用者(ファンドマネージャー)の経験知をもとに、連載しています。
今回は、為替相場について大胆にリスクシナリオを述べてみたいと思います。
第82回は「大円高?今後の為替相場」です。
【為替相場の一般的な決定要因】
為替相場の方向は、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)から説明されることが多いです。具体的には①金利差、②国際収支、③購買力平価、等から、です。
また、実需筋、投機筋等、需給動向を見通しの根拠とすることもあります。足元でいえば、大きな日米金利差を背景に円キャリートレードは生じやすいので、ドル買いは止まらない、などの説明です。
【相場の実際の決まり方】
ところが実際には、それだけでは決まらないこともあります。ファンダメンタルズを無視し政治的意向優先で決まることも多い。
為替とは2国間の通貨の調整レートであり、強い方の国が為替政策に明確な意向を持てば、その方向に動かされてしまいます。
ドル円で言えば、米政権の意向次第です。
トランプの政策はドル高志向、しかし彼の希望はドル安です。今は彼の希望が、米政権の意向。こうなると日本の経済状況、日本の意向などは一切無視、です。
自国のことしか見ない日本人は、だから為替の見方を間違えやすい。
また、相場は通常、水準感よりも新たな変化の方向に合わせて動きます。
日米金利差は依然大きいがそれは既に相場に織り込まれ、足元金利差は縮小傾向、だからドル安円高へ、ということ。
【意外な円高の理由1 アメリカ】
貿易赤字を気にするトランプ政権では、ドル高が問題視され、ドル安が進みやすいことが考えられます。
さらに加えて、足元アメリカの景気が急悪化するリスクが懸念されます。
トランプ政権の矢継ぎ早の関税政策は、関係国を震撼させていますが、実は当のアメリカ国民にも大きなマイナスの影響を与えています。
米期待インフレ率は直近で急上昇し始めました。国民は輸入品の大幅値上げに身構えています。
またアトランタ連銀の推計する「GDP NOW」では、2025年1~3月期米GDP成長率の推計値が+2.3%→ー1.5%と劇的に悪化し(2/28)、直近はマイナス幅を拡大、なんとー2.4%!(3/6)。
駆け込みの輸入急増に加え、株高に支えられてきた消費マインドが一気にしぼむとの推計でしょう。このような急悪化は近年見たことがありません。
トランプの暴走に、他国でなく米国民が「肝を冷やして」いるのです。
また、イーロン・マスクの政府効率化省(DOGE)による公務員の大量解雇も政府内外に不評で、同省職員は抗議の意味を込めて大量辞職し、また米国内でテスラ車の不買運動なども起きているようです。今後の解雇の規模次第では、米の雇用市場に悪影響が現れるかもしれません。
これらは今後、トランプの人気にとって打撃となり得ます。
彼は2年後の中間選挙で勝利せねばなりません。一定の成果を得て選挙前に関税を戻したとしても、冷えた国民のマインドは元に戻るのでしょうか。
【意外な円高の理由2 日本】
さらにもう1つの円高要因は、日本サイドです。
最近日銀の姿勢に大きな変化がみられます。昨年までは、円安を止めるための為替相場にらみの金融政策が行われていた印象でしたが、直近で最も日銀が気にしているのは、日本の物価です。
コメの大幅値上げ、さらには天候不順による生鮮食品の値上げもありますが、加えて日銀の目指す「賃金上昇を伴う持続的な物価上昇」が実際に実現しつつある点が、日銀の考えに影響を及ぼしているとみられます。
日本が完全にデフレから脱却し、本格的インフレ時代を迎えている、だから遅れずに金利を上げて金融政策を正常化しよう、との認識を日銀が深めているようです。
日本の金利は少しづつだがまだ上昇を続ける、との見方が円高を支える、ということです。
【さいごに】
あなたは為替相場が今後どうなると思いますか。
新NISAでオルカンを買った皆さんは、円安派ですよね。
「え? いやぁ為替の先など分からん」ですか?
海外投資は、円高になれば負け。為替相場の先行きを見通せない人に、海外投資をする資格など無い、と私は思います。
上記の日米の状況は、どの程度相場を動かすでしょう。
最大の焦点はアメリカ、つまりトランプ次第です。彼が“暴走”をやめなければ、一段の円高進行も有り得ます。
海外投資は難しく、大きなリスクがある。オルカンを買った多くの方は、そのリスクを十分認識できていないと思われます。
投資の最大のリスクとは、投資先にあるのではなく、理解不足で投資する不勉強な投資家、にあります。
インフレ時代は、投資を避けて生きることは不可能。
貯金のみ、は人生の敗者を意味します。
人生を賭けて、さらに学びましょう。
以上、株メンターⓇでした。
来月もお楽しみに。